僕達の願い 第36話


ごろりとソファーに寝転がりながら、C.C.はピザを片手にテレビを見ていた。
画面の向こうには日本で有名な芸能人が2人映し出されていた。
どうやら今日のはこの二人が司会らしい。
そしてその二人の前には身なりのいい4人の子供が仲良くソファーに座り、にこにこと可愛らしい笑顔を向けていた。

「なんだ、子供らしい笑顔も様になっているじゃないか」

C.C.は楽しげに、慈愛に満ちた優しい眼差しを画面に向けていた。

『本日のお客様は、凄い方々なんですよ。右から枢木ゲンブ首相の嫡子、枢木スザク君、皇カグヤ親王殿下、そしてブリタニアから留学されている、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿下と、ナナリー・ヴィ・ブリタニア皇女殿下です』

拍手と共に紹介された彼らは、カメラに向かってそれはそれは可愛らしく笑った。
目を閉ざした黒髪の少年を中心に、左には飴色の髪を左右に縛った大きなスミレ色の瞳を持つ少女。右に、黒髪の長い髪を縛った若緑色の瞳の少女、その右に栗毛色の癖っ毛と翡翠の瞳の少年が座っていた。
人形のように愛らし子供たちではあるが、黒髪の少年の顔には醜い大きな傷があり、良く見ると他にも痛ましい傷が視界に入った。化粧で誤魔化切れない傷跡に、最初司会者はどう扱うべきか困惑したようだが、子供たちが何事もないように話すので、次第に緊張も解けたのか穏やかな雰囲気の中対談は続けられた。

その姿を見て、よくやるなとC.C.は笑みを浮かべながらピザをパクリと食べた。
あの扇の放送の後、予想通り皇やブリタニア大使館に取材が殺到した。そして扇がカグヤと何度も連絡を取ろうとしたり、ルルーシュの居場所を探そうとしていた事がすぐに知れ渡った。
扇の方は尋問が始まる前に桐原の連絡が入り、尋問前に時間を作る事が出来た。
秘密裏に警察署から移動された扇達にルルーシュはギアスを掛けた。
兵器や他国の戦争、各国のクーデター、自然災害など、話されては困る事は全て一時忘れさせた。
本当はKMFの事も知っていたし、自分も乗っていたけど今まで忘れていた。あの国で大きな地震があったのは知っていたが、今まで忘れていたと後出しさせるためである。そうすることで余計に扇たちの話の信憑性を失わせるのだ。
彼らの持つ”ギアス”の情報は”強力な催眠術”に書き換え、悪逆皇帝が世界征服をした際、部下を全員意のままに操った事はそのままにした。
その後密会した情報は全て消し、扇たちは警察署へ戻っていった。

---ルルーシュは悪逆皇帝で、強力な催眠術で人々を操り世界征服をした。

警察の尋問で、扇たちは自分たちの妄想と現実の区別がつかなくなっていると判断され、今精神病院に収容されている。
井上と吉田はあのテレビ放送の時「自分たちは後ろで見ている。やはりここは実際に体験した扇たちだけ方が説得力あるだろう?」と説得し、元首相と側近に一般人は混ざらない方がいいとアピールしたため、あの人ごみから離れた近くのカフェでコーヒーを飲みながら傍観していた。
その後、扇たちから名前が出たという事で、二人も呼び出された。
実は彼らに携帯を盗聴されていた事、彼らの話を聞かなければ、ルルーシュ殿下に操られているんだと言われて、何をされるか解らなかったから一緒にいたと説明をした。実際に携帯は盗聴されていて、受信先は扇たちの携帯だったことと、親に変な人に纏わりつかれていることをそれとなく相談しておいたことも幸いし、お咎めなしとなった。
その事も含め、雑誌や新聞は連日この事を取り上げた。未成年のため名前が明かされなかったが、ネット上では祭り状態となり、ルルーシュ皇子はどんな人物なのか、本当に悪魔のような人物なのかも?と噂され始めたため、時期を待っていたルルーシュが今だと判断し、こうしてテレビ出演する事にしたのだ。
もちろん、根回し済みだ。
母、マリアンヌ后妃の暗殺事件から始まり、そしてその時負った傷の写真や現在両腕が使えるまでに回復したことも詳細に取り上げられた。

『留学という名目で日本に来ていますが、実際は違います。母は暗殺され、犯人はいまだ捕まっていません。厳重な警備がされているペンドラゴン宮殿内のアリエスの離宮に忍び込んだのですから、犯人はブリタニア人の可能性が高いと見ています。ですから、ブリタニア国内にいれば、僕たち兄妹が危険だと判断された皇帝は、国外の方が安全だろうと枢木首相に頼み、こうして匿ってもらっていたのです』

目を閉ざした幼い皇子は、妹の手を握りながらそう答えた。
袖から覗いたその手にも醜い傷跡が見て取れる。
流暢な日本語で話す皇子と皇女に最初司会者は驚いたが、「ここに来てからは周りが日本人なので、教えてもらったんです」と、はにかみながら答えると、幼いのに凄いと、関心の声が上がった。日本語に興味を持って覚え、この国に強い関心を持った幼い外国人。それだけでいやでも好感度が上がる。

『首相は怪我で身動きの取れない僕のために、いい医者がいないかとあちこち調べてくださり、とても腕のいい方を呼び寄せてくれました』

指一本動かせなかったのに、今はこんなに自由に動くんですよ。と、手を動かしながら満面の笑みで、それは嬉しそうにルルーシュは言った。
そんな感じで、ルルーシュ皇子とナナリー皇女は日本にはとても感謝していると何度も口にし、スザクとカグヤも、ルルーシュとナナリーと遊んだり、勉強をしたりと、楽しく過ごしている事をアピールした。
ブリタニア語も教えてもらっているので少し話せるんですよと、スザクとカグヤが流暢なブリタニア語で会話をすると、司会はますます驚いたと言う顔をした。
にこにこと笑顔を絶やさない四人の子供は、友好的な関係を築いている事を日本とブリタニアに印象付けた。




この放送はブリタニア側でも、ほぼリアルタイムで放送されており、重症とされたマリアンヌ后妃の御子の元気な姿に、国民は喜んでいた。庶民出の皇妃マリアンヌは、ブリタニア皇族の中で最も人気が高かった。何せ元ナイトオブラウンズでもあるのだ。皇帝の騎士となり、見初められて皇妃となったのだから、憧れる者も少なくは無い。
普段弱肉強食を謳い、威厳たっぷりの強面で演説する皇帝が、我が子を守るため他国に逃がしていた事もまた、国民感情を激しく揺さぶった。
本来ならブリタニア国内で守るべきだったと言う意見もあったが、テロリストとはいえブリタニア人に間違いない以上、信頼できる部下に託し外国を頼ると言う苦渋の選択をしたのだと、皇帝の人気も急上昇した。
それも全てルルーシュの計算通り。
日本を持ちあげ、同時にブリタニア皇帝も持ち上げる。
どんなに皇帝が否定しても、それはてれ隠し、あるいは皇帝である以上そう言わなければいけないのだろうと、国民は解釈するまでに至った。
当然、ルルーシュはあらゆる情報操作を行っており、皇帝が否定すればするほど、愛情深い男なのだと思われるよう仕向けている。
それは皇帝にとって何より屈辱的な事だろう。
侵略戦争も思うように進まなくなるに違いない。
間違いなく日本には当分攻め込めない。これだけルルーシュとナナリーを丁重に扱った国に攻め込むなど国民は許しはしない。

ククククク、フハハハハハ。

と、ゼロらしい笑い声と悪人顔で情報操作していたのだから、完璧に仕上げただろう。
何せ世界を手玉にとり、悪逆皇帝と呼ばれ、悪人面で世界征服をした揚句、世界平和という目に見えないプレゼントを惜しげもなくばら撒いて、全ての憎しみを消し去るために派手な自殺をした世紀のペテン師だ。
そんなルルーシュの情報操作に太刀打ちできる相手など、あの時代のシュナイゼルぐらいしかいないが、この時代のシュナイゼルに記憶がない事はロイドがここに来る前に確認していた。
となれば、誰にもこの情報操作は見抜けない。
ルルーシュの一人勝ちだ。
完全な出来レースを目の当たりにしながら、C.C.は美味しそうにピザを口にした。



当時のカグヤの呼び方って何なんでしょうね。
皇族の血を引いているけど、皇という苗字があるから本筋ではないのかな?
それともギアス世界の皇族は苗字があるのかな?
でもスザクの許嫁ということは、枢木家に入るんだろうから継承権は低かったのかな?
ニワカだからその辺よくわかってないんですよね。

私の書く話ではカグヤは常に親王殿下。
継承権は高いという事になっています。
※男系ではなく女系が皇位を継承している前提。

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